公開日 2026年07月08日
高校の「理数探究」の授業において、ものづくりの原点となる「アート思考」をテーマにした講義とワークショップを行いました。最新技術を扱うだけでなく、生徒たちの「自分なりの問いを立てる力(思考の枠組みを外す力)」を育む取り組みです。
1. 30秒で描く「サイコロ」— 私たちの頭にある固定概念
授業の冒頭、生徒たちに「30秒でサイコロを描いてみてください」という課題を出しました。
提出された絵のほとんどは、遠近法を用いた「斜めから見たリアルなサイコロ」でした。私たちは無意識のうちに、「サイコロを描くならこう」という一般的なイメージや固定概念(常識)に沿って物事を描いていることに気づかされます。
2. 「リアル」とは何か?アートの歴史から学ぶ視点の違い
ここで生徒たちに、「そもそも『リアル』とは何だろう?」と問いかけました。 美術史を振り返ると、時代によって「何をもってリアルとするか」の捉え方が大きく異なります。
-
エジプト時代:視界に見える形ではなく、「そのものの特徴や本質(概念)」を完璧に描くことがリアル
-
印象派:網膜が感じた「光や一瞬の空気感」を描くことがリアル
-
キュビスム(ピカソなど):一つの視点ではなく、「複数の角度から見た姿を一つの画面に再構成する」ことがリアル
時代や文脈によって「リアル」の正解は一つではないことを学び、自分たちの「当たり前」を考え直すきっかけとしました。
3. 「アート思考」で常識と固定概念を解きほぐす
創造性を発揮するためには、「常識を疑い、自分の中の固定概念を崩し続けること」が不可欠です。今回は、美術教師・末永幸歩さんの著書などでも知られる「アート思考」の考え方を取り入れ、思考のトレーニングを行いました。
他人の評価や「正解」にとらわれず、自分なりの視点や違和感を大切にすることの実践です。
4. 五感を使った観察と「問い」をつくるワークショップ
後半は、机の上にある身近なものを一つ選び、観察と「問いづくり」の実践ワークを行いました。
【ステップ1】五感で徹底的に観察する
手元にあるペンやノート、消しゴムなどを、見るだけでなく、触る・聞く・匂いを嗅ぐなど、五感すべてを使って改めて観察しました。
【ステップ2】3つの方法で「問い」を深める
観察した対象に対して、次の3つのアプローチで新しい「問い」を作成しました。
-
前提を疑う(例:「なぜこれはこの形・色・素材でなければいけないのか?」)
-
バイアス(先入観)を疑う(例:「これは勉強のためだけのものなのか?」)
-
再定義する(例:「もしこれが別の世界にあったら何と呼ばれるか?」)
【ステップ3】「面白い問い」の全体シェア
最後に、班ごとに議論を行い、「一番面白い!と感じた問い」を選出してクラス全体で発表・共有しました。固定概念から解き放たれたユニークな問いがいくつも飛び出し、教室は大いに盛り上がりました。
テクノロジーを使いこなす技術(3DプリンターやAI)と、自分独自の視点で問いを生み出す「アート思考」。この2つを融合させることで、これからの探究活動でより深みのある課題設定や作品制作に繋げていきます!
