世界のコンサートツアーで舞台照明を支えた銘機「AVOLITES PEARL」を復活! 長年の課題を解決 エンターテイメント班

公開日 2026年09月30日

世界のコンサートツアーで舞台照明を支えた「AVOLITES PEARL」を復活!

【高校生によるプロ機材の保守・継承】技術マニュアル等の資料が一切ない極限の環境下、手探りで回路検証

電気電子工学科エンターテイメント班はこのほど、世界中のコンサートツアーで圧倒的なシェアを誇った舞台照明調光卓「AVOLITES PEARL(クラシック)」の完全分解メンテナンスを行いました。
第一線で活躍してきたプロ仕様のハードウェアに直接触れ、その回路設計や堅牢な構造を学ぶとともに、今後もイベント等の現場で安定して稼働できるよう丁寧なオーバーホールを完了させました。
 

本機は、現代のコンサート現場におけるタイムコードを用いた自動化や、多数のムービングライト(インテンシティ、ゴボ、パン・チルト等のデジタル制御)のオペレーションを確立した、デジタル照明黎明期の立役者的な機種です。 生徒たちはこの往年の銘機の内部構造に直接触れ、実践的なハードウェアメンテナンスに挑戦しました。

実機の状態は、モード切替用のキースイッチが紛失してRUNモードに固着しており、プログラムの書き換えやシステム設定が一切不可能な状態でした。さらに、SRAM保持用のバックアップ電池の残量不安、Rolacue(ローラー部)や筐体側面への内部フラットケーブルの干渉など、複数のハードウェアトラブルを抱えていました。
技術マニュアル等の資料が一切ない極限の環境下、生徒たちは手探りで筐体の完全分解、配線の見直し、回路の検証を行い、見事に往年の銘機の動態保存・メンテナンスに成功しました。
<作業内容>
・モード切替用の鍵スイッチを誤操作防止のロック式特殊スイッチに交換
・SRAMメモリー用リチウムバッテリーの電圧測定 負荷測定
・RolacueのポジションスイッチとフラットケーブルのRolacueへの接触防止

モード切替スイッチ 
MILスペックに学ぶ ロック式特殊スイッチで対応

プロの照明エンジニアの間で、本機の長年の課題とされていたのが「モードキースイッチの紛失および接触不良」という絶望的なトラブルでした。
生徒たちはこの課題に対し、誤操作を100%防止する特殊スイッチへの換装を計画。既存のキースイッチから伸びる3本の信号線を解析するため、回路測定器(テスター)を用いてシャーシグランドを特定しました。残る2本の信号線との導通パターンを検証した結果、メーカー非公表の仕様であった「PROGRAM」「RUN」「SYSTEM」の3モードの切り替え挙動を完全に解明しました。
また、元の「鍵」が持つ誤操作防止機能をさらに高めるため、MIL規格(米軍軍用規格)準拠の「レバー引上げロック式トグルスイッチ」を採用。筐体側の既存の大きな角穴に対し、選定した6.3mm丸軸スイッチを強固にマウントするため、既存のキーベースを工作機械で精密に削り出し、専用の変換台座(アダプター)を新規に設計・製作しました。
この特殊スイッチを組み込んだことで、オリジナルの意匠を損なうことなく、現場のハードな運用にも耐えうる質実剛健なモード切り替えシステムへと進化を遂げました。
 

SRAMメモリーリチウム電池の残量測定
プロが最も恐れる暗黒のトラブル「SRAMの電池切れ」を未然に防ぐ

完全に放電を落ち着かせた状態を担保するため、主電源オフから数十分待機した上で、マザーボード上の3.6Vリチウム電池の端子電圧を測定しました。デジタルマルチテスターによる実測値は3.638Vを示し、定格電圧を十分に上回る、新品に近い極めて健全なバッテリー容量(セルコンディション)を確認できました。

Rolacueのポジションスイッチと内部フラットケーブルのRolacueへの接触防止

Rolacue(ローラーキュー)のポジションスイッチ群に関しては、目視による酸化(錆)や接点不良がないことを確認後、コモン端子と各接点間の接触抵抗を測定(上写真)。実測値0Ωの極めて良好な導通状態を確認しました。さらに、筐体側面への接触やRolacueへの巻き込みリスクを排除するため、内部フラットケーブルのルーティング(引き回し)の再最適化を施しました。なお、各プリセットフェーダーおよびサブマスター(プレイバックフェーダー)に実装されている60mm・Bカーブのポテンショメーター群についても、摺動(しゅうどう)時の引っかかりやトルク異常が見られなかったため、今回は交換を見送り、既存パーツの継続運用と判定しました。

コンサート現場の臨機応変なオペレーション(バスキング)を支え、世界標準として愛された「AVOLITES PEARL」。長年の課題であった「キー(鍵)の紛失と接触不良」という致命的なトラブルに対し、誤操作を100%防止するMIL規格準拠のレバー引上げロック式スイッチへと換装。さらに、内蔵SRAMのバックアップ電池の健全性確認や、内部フラットケーブルの巻き込み防止処置まで徹底した予防保守を施しました。デジタル制御によるムービングライト黎明期をリードしてきた歴史的銘機が、ここに復活を遂げました。
今後は、校内の文化祭や地域の文化会館で開催されるコンサートの現場において、劇場の調光器(ディマーユニット)へDMXパッチを施し、現役のメインコンソールとして実践運用していく予定です。

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