校長挨拶
令和7年度 2学期始業式校長式辞 令和7年9月1日
おはようございます。酷暑と言われた日々が続き、疲れもある中、今日、みんなで二学期始業式を迎えられたことに感謝します。
いよいよ二学期が始まります。夏休み、勉強や部活動に汗を流した時間、ボランティアやアルバイト、地域の行事で存在感を示した時間、家族や友人との時間、自分ひとりで過ごした時間、とても貴重で思い返せば幸せな時間だったのではないでしょうか。一方、3年生にとっては進路に向けた探究、準備が着々と進んでいて、必ずしも思った通りに過ごせた夏休みではなかったかもしれませんね。3年生の皆さんの努力が結実した内定や合格の報は、私達教職員にとって、特別な幸せが感じられる瞬間です。内定、合格、という、よい出会いに恵まれることを願います。
一方、この夏、テレビやインターネット、各メディアから、異常気象、災害、世界各地で続く紛争、私達の国の過去の戦争に関する報道などが、毎日、私たちの目に飛び込んできました。今年は終戦から80年の節目の年ということもあり、多くのメディアで当時のドキュメントが流されていました。私たちはそこで、戦争が多くの命を奪い、人々の生活を破壊し、そして何よりも、誰も幸せにしないという現実を、改めて突きつけられました。
【命】
平和の尊さを知り、戦争の悲惨さに胸を痛める。災害に見舞われた人々に共感、同情する。それは、人間としてとても自然で大切な感情です。では、「幸せとは何か」考えたことはあるでしょうか。
今の私たちにとって、「幸せ」の輪郭は見えにくい。例えば、美味しいご飯を食べること、好きな音楽を聴くこと、友達と笑い合うこと、安心できる誰かとの出会い、まだ見ぬ自分との出会い、など、これらも幸せの一部です。しかし、戦争や災害の悲劇を目の当たりにした今、改めて考えてみてください。
【幸せってなんだっけ?】
「あなたにとっての幸せとは、一体何なのか?」
二学期は、体育祭、芸術鑑賞、探究や生徒会活動の成果発表会、といった行事が目白押しです。仲間と協力し、一つの目標に向かって努力することは、現代においては、当たり前というより理想というべきかもしれません。だからこそ、皆さんは多くの困難に直面するでしょう。時には意見がぶつかり、くじけそうになることもあるでしょう。しかし、その一つひとつの経験の中に幸せのヒントが隠されているはずです。
~歌手のウラの「しあわせのうた」には、「歩けば足音が心地良くて 疲れた体が心地良くて、瞬きするように小さな事だけど、それが幸せ
誰かの言葉が温かくて、あなたの笑顔が温かくて、一つ一つ喜びが積もっていく、これが一番の幸せ」とある。
また、戦争を体験した谷川俊太郎氏は「幸せについて」という著書で「ドラマチックな幸せは長続きしないからこそ濃い。幸せが毎日の暮らしの低音部を担っていて、幸せだっていうことにも気づかないくらいのBGMみたいな幸せが、一番確実な幸せかもしれない。」と言う。
一方、科学の世界で、東京大学薬学部教授池谷祐司さんは、幸せホルモンと言われるセロトニンの研究を紹介しながら、“幸せホルモンが増えると幸福感を感じるというより、むしろ不幸を感じにくくさせて、急場をしのぐ作用をする。いわば幸せホルモンは、実は「忍耐ホルモン」だ”と述べています。~
【賢い人】
人を愛すること、人を許すことで、誰かと心を通わせる喜びが積み重なり、自分と周りの人々の幸せにつながるのかもしれない。そして、今、私たちがこの場で共に学べることで得られる、何かを成し遂げた達成感が幸せに関係しているかもしれない。知らないところで間違いなく誰かの支えになっているのだ、という私からのメッセージを信じることで変わる世界もあるかもしれない。時には不幸を乗り越える忍耐が、あなたの世界を変えるという、思ってもみない幸せの副産物がころがりこんでくるかもしれない。
二学期は、あなたが「賢い人」として、ポジティブな言葉で丁寧に対話を重ね、よき出会いを呼び込み、共に支え合い、喜び合える関係の輪を広げていく中で、短絡的に幸せを求めるだけではなく、「幸せについて」深く考える、ファーストアプローチのシーズンにしてください。
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『飛翔VOL.91』寄稿 令和7年5月吉日
何年ぶりでしょうか…桜の花が残っていた今年の始業式、入学式が厳粛に執り行われ、その輝きを放つ瞳が印象に残ったまま、対面式、運動部の活躍、輝潮祭、探究活動と共生交流活動、各キャリア行事によって、瞳の輝きは全身から「高校生たる所以」と言わんばかりの眩しい光に進化していきました。保護者の皆様をはじめ、本校を形作ってくれている皆様が、大人として生徒の手本となってくれていることに深く感謝申し上げます。
さて、ある高名なアニメ長・短編映画の監督の仕事ぶりに密着したTV番組を視聴したことがあります。監督は「…面倒くさい…面倒くさい」と口ずさみながら、キャラクターの動きや表情を細かくチェックしていました。その後のインタビューで「私達の日常は大抵、面倒くさいことの連続。でも面倒くさいからといって手を抜くと、日常生活に支障が出るか、信用を失う。アニメ映画でも、手を抜けば人の心を動かす作品にはならない。」とおっしゃっていました。面倒くさいと思うことこそ、感情的にならず、淡々とやり過ごす自己指導力を身に着けたいものです。また、生徒の皆さんは、多くの人に支えられています。それと同時に、あなたが居るだけで、多くの人を支えているのです。心の拠り所になっているのです。多くの人を支えるために、面倒くさいことを理路整然と計画的に実行する知性を身に着けたいものです。
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『令和7年度第一学期終業式 校長式辞』
皆さん、一学期が終了しました。
熱心に授業を受ける皆さんの真剣な表情が見られ、聞く姿勢や新たな知識や技術との出会いを楽しむ姿勢が、伝わってきました。また輝潮祭をはじめ、部活動や生徒会活動など、仲間と協力して今できることに 全力でチャレンジする姿勢に感動しました。そうした浜松江之島高校で出会った皆さん一人一人が 学校を形作っていることに感謝します。
さて、一学期始業式で、出会いは必然という話をしました。新たな知識や技術との出会い、お互いをよく知らない人との出会い、自分が知らない自分自身との出会いがあったことでしょう。まず、新たな知識や技術との出会い、つまり勉強は何のためにするのか考えたことはありますか?
正解かどうかは皆さんが判断してくれれば結構ですが、私の一つの答えは「賢くなるために勉強する」です。ここで言う「賢くなる」とは、単に知識を詰め込むことではありません。
もちろん、受験や定期テストのために、知識や技術を身につけることは重要です。しかし、同等に大切なのは、物事を深く考える知性、本質を見抜く洞察力、そして、学んだことを次の課題解決や実生活に応用する適応力を身につけ、自分の感情をコントロールして、言葉を選んで上手にコミュニケーションをとる、自分を表現する社会人としての基礎力を身に着けることです。未知の知識や技術との出会いは、未知の自分との出会いをもたらします。
皆さんは、授業で新しい知識を得たとき、なぜそうなるのか考えたことがありますか? 友達との議論の中で、自分の意見を深め、相手の意見を理解しようと努めましたか? 答えが見つからない問題に直面したとき、すぐに諦めず、粘り強く思考を巡らせることができましたか?
もし、一つでも「そうだ」と言えることがあれば、皆さんはこの一学期、確実に賢くなるための階段を上ってきたと言えます。それは、新たな自分との出会いに成功した、ということになります。
皆さんには、勉強ができる人であると同時に、賢い人になってもらいたい。賢い人として、「ありがとう」「大丈夫だよ」「一緒にやってみよう」などポジティブな言葉を使いましょう。言葉は、私たちの心を映し出す鏡であり、周りの人々に大きな影響を与えます。
難しい課題に直面したとき、「どうせできない」と諦めるのではなく、「どうすればできるだろう」と前向きに考えて言葉にできたでしょうか。友達が困っているとき、「仕方ないね」で終わらせるのではなく、「何か手伝おうか」と声をかけることができましたか。ポジティブな言葉は、周りの人を笑顔にすることができ、自分自身を勇気づけます。
「鬼滅の刃」というアニメーションのキャラクターである“かまど たんじろう”も言っていました、「人のためにすることは、めぐりめぐって自分のためになる」と。言葉も同じです。
ポジティブな言葉は、皆さんの周りを明るく照らし、人間関係をより豊かにして、さらなる新たな出会いを生み、コミュニティを広げ、これからも浜松江之島高校全体をしなやかに包んでくれるでしょう。
私たち大人であっても、ポジティブな言葉だけを使い続けるのは難しいことですが、先生方は、ネガティブな言葉をポジティブな言葉に言い換えるリフレーム、リフレーミングという技法を意識してくれているので、ぜひ聞いてみてください。
ここで、出会いは必然という、4か月前の私の言葉を、今、訂正しましょう。賢い人にとって、新たな知識や技術、人との出会いは、必然的に新たな自分との出会いをもたらす。さらに、賢い人は、新たな出会いを必然ととらえ、出会いたい新たな自分の姿を形作ることができる、です。
夏休み中も、自分自身が賢い人であることを強く自覚し、ポジティブな言葉を使って生活してください。家族や友人との会話の中で、皆さんの言葉が温かい光となることを願っています。
今日から、一学期で得た学びをしっかりと振り返り、心身ともに充実した時間を過ごしてください。そして、二学期に、元気な皆さんと再会できることを楽しみにしています。
令和7年7月18日
静岡県立浜松江之島高等学校 校長 鈴木雅道
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