数学セミナーは平成15年度から17年度まで行われていた数学講演会に代わって平成18年度から行うようになったものである。静岡大学八巻直一教授(平成20年度まで工学部システム工学科、平成21年度特任教授)を講師として迎え、2月の2日間、授業2コマ(130分)で行った。また、第3期SSHとなる平成23年度には静岡大学の谷本准教授をお招きした。
平成23年度
実施日時 平成23年11月17日(木) 平成23年12月8日(木)
いずれも第4、5時間目(12:50~15:10)
実施場所 磐田南高校 パソコン教室
講 師 静岡大学教育学部准教授 谷本 龍二 先生
授業内容 ユークリッドの互除法、ディオファントス方程式、フェルマーの小定理
対象生徒 理数科2年生
方 法
事前の打ち合わせにおいて、今回の数学セミナーでは、2つの目的を立てることが確認された。ひとつは高校で扱われていない整数問題を題材として、やや高度な問題を解くということであり、もうひとつは未知の問題に対してどのようにアプローチするかを考えさせ、広く自然科学の研究方法を学ばせる、ということである。これから課題研究が本格化していくこの時期に研究方法を学ぶということは大きな意味があり、研究方法自体の講義や演習は不足していると考えていたため、生徒にとって有意義なものになるであろう事が予感された。
1日目は、Mathematicaの操作方法の復習から始まり、ユークリッドの互除法について、順を追って具体的な数値で計算しながら進んでいった。その際、手計算で考え、Mathematicaで確認するという方法をとった。テキストは、問題の配列がよく考えられており、具体から抽象へ無理なく進むことができた。ただ、生徒にとっては一般化の壁が高いらしく、予定していたよりも多くの時間を費やした。1日目の最後にいくつかの宿題が出され、次回までに考えておくことを指示された。
2日目は、宿題の確認からディオファントス方程式についての演習、計算機実験が行われた。1日目から時間が経っていることもあり、復習に時間を取られたため、フェルマーの小定理の姿はおぼろげにしか見ることができなかったが、計算機実験をとおして法則性を考える演習は大変充実したものであり、当初の目的をある程度達成できたのではないかと思われる。
平成21年度、22年度
実施場所 磐田南高校パソコン教室
授業内容 「ORの世界」
・戦争のモデル
・カーナビの秘密
・クイズ必勝法
・株取引の数学
・お父さんのバザー
・みんなで旅行に出かけよう
対 象 理数科2年
実施結果
21年度からは、先生の専門分野であるOR(Operation Research)とあって、興味深い話をたくさん聞くことができた。ORは、高校数学ではなじみのない言葉だが、簡単な線形計画法は2年次に学んでいるし、平均や標準偏差といった統計の基本も数学の授業で学んでいる。それより一歩踏み出した、共分散や相関係数といった内容を含め、高校生が興味・関心を持つように、多くの具体例を示しながらの講義と実習であった。
一日目は、川中島の合戦を題材に取っての「戦争のモデル」からスタート。一見数学と関係のなさそうな問題を、モデル化して表計算ソフトでシミュレートするという手法が生徒には大変新鮮で、一気にORの世界に引き込まれた。続く「カーナビの秘密」も好評で、身近な題材に数学が応用できることを実感した。統計学の手法を用いた「株取引の数学」は生徒にとっては難しかったようだが、Excelを用いた実習には皆で相談をしながら真剣に取り組んでいた。
二日目は、高校数学でも基礎を学んでいる線形計画法から、ORの威力を示すAHP(Analytic Hierarchy Process)へと進む。用意したExcelのマクロがパソコン教室の環境では動かないというトラブルはあったものの、手作業での計算でORの神髄を紹介したところで講義を終えた。生徒達は楽しそうに講義を聴き、コンピュータ実習に参加していた。
平成18年度~20年度
実施場所 磐田南高校パソコン教室
授業内容 「統計学の基礎を学ぼう」
・統計学とは?
・確率とは?
・推定と検定
・新聞売り子の問題
対 象 理数科2年
実施結果
八巻教授がCDを生徒ひとりにつき一枚用意して下さり、それを直接生徒に手渡すことから始まり、和やかな雰囲気の中で講義と実習が行われた。統計学は大学入試では中心となっていないため、あまり深く学習していない。そうした高校側の事情を踏まえて、高校生が興味・関心を持つように、多くの具体例を示しながらの講義と実習であった。生徒達は楽しそうに講義を聴き、コンピュータ実習に参加していた。統計学は応用の幅が広く、杜会において確率と統計がいかに使われているかが良く理解できた。また、事後に行ったアンケートから、統計学は「将来自分の研究や仕事に役立つ」と回答した生徒が多く、生徒たちは満足し感謝していた。
教授が、生徒たちに「なぜ?」「どうしたらいい?」と問いかけることが、度々あり「自らやってみることの大切さ」「なぜ、そうなるのか?」と考え続けることの大切さを学ぶことができた。
磐田南高等学校 SSH 数学講演会
数学講演会は理数科2年生と普通科希望者を対象に平成15年度から17年度まで実施した。
平成15年度
第1回 日 時 平成15年11月12日(木) 15:30~17:00
会 場 磐田南高等学校はぐま会館会議室
講 師 静岡大学理学部助教授 芥川和雄
講演題目 大学で学ぶ線形代数 - なぜ線形代数は大切か
内 容 線形代数とは/平均値の定理と行列/2変数関数と行列
第2回 日 時 平成15年12月8日(月) 15:30~17:00
会 場 磐田南高等学校視聴覚室
講 師 静岡大学理学部助教授 伊澤達夫
講演題目 「数」ってなんだろう
内 容 群・環・体/ハミルトンの4元数体
第3回 日 時 平成16年1月31日(土) 11:00~12:30
会 場 磐田南高等学校はぐま会館会議室
講 師 静岡大学理学部助教授 奥村善英
講演題目 目に見えない図形とその複雑さの判定に関する話題
内 容 数の体系/連続性/フラクタル
平成16年度
第1回 日 時 平成16年10月19日 14:00~16:30
会 場 静岡大学理学部C棟309教室
講 師 静岡大学理学部教授 浅井哲也
講演題目 分数・分数・分数
内 容 ファーレイ列/フォードの円/掃き出し法
第2回 日 時 平成16年12月17日 14:00~16:30
会 場 静岡大学理学部C棟309教室
講 師 静岡大学理学部教授 松田稔
講演題目 凸関数について
内 容 凸関数の定義/微分・積分
平成17年度
第1回 日 時 平成17年10月31日 12:50~15:00
会 場 磐田南高等学校第2選択教室
講 師 静岡大学理学部助教授 板津誠一
講演題目 ランダムウォークについて
内 容 確率の導入/ランダムウォーク/マルコフ連鎖
第2回 日 時 平成17年12月14日 12:50~15:00
会 場 静岡大学理学部
講 師 静岡大学理学部助教授 久村裕憲
講演題目 塵も積もれば無限大?
内 容 正項級数