数学研究会 目 的
本校には部活動としての数学研究部がない。しかし、数学に興味を持つ生徒はおり、高校数学の内容とは違った数学の面白さを体験させたい、というのが設置の狙いである。
研究内容と経過
まず研究会の発足であるが、漠然と「数学」といっても集まらないので、研究テーマを絞って募集をした。研究テーマは「L-System」である。L-system(Lindenmayer system)は、植物の成長プロセスをはじめとした様々な自然物の構造を記述・表現できるアルゴリズムで、1968年、理論生物学者であり植物学者のアリステッド・リンデンマイヤーによって植物(酵母、菌や藻類)の成長過程や構造・相互関係等を表現するための方法として開発された。自然物の他にも、自己相似図形やフラクタル図形を簡単に記述でき、人工生命の生成にもよく用いられる。初歩的には、タートルグラフィクスを用いてシステムを構成するが、中学校までの知識があれば取組むことができる。静岡大学教育学部附属島田中学校ではドリトルを使った授業を行っており、ここでタートルグラフィクスを学んだ生徒がメンバーとして入っている。高校数学の行列の知識があれば、3次元タートルグラフィクスなどの高度な研究ができるが、逆にこの研究を通して行列の考え方と座標変換について学ぶこともできる。
7月、生徒にコンピュータソフトCinderellaを渡し、夏休みを利用して各自研究をスタートすることとした。夏休み中であるので、学校での指導や、集まっての活動はやりにくいため、Web上に掲示板とファイル置き場を用意し、ここで意見交換などを行った。まず、文献「An Introduction to Lindenmayer Systems(文献1)」を翻訳することを手がけた。専門用語がかなりあり、高校1年生には難しいが、難しいことにチャレンジするのが当初の目的でもある。夏休みの間に、Cinderellaの基本的な使い方と、プログラミング言語Cindyscriptを用いたタートルグラフィクスについてはほぼ理解し、2学期には、放課後集まれるときに(原則として木曜日)コンピュータ室で研究を行った。Lindenmayer自身が書いた本「The Algorithic Beauty of Plants」を1冊購入したが、同じものがPDFとしてWeb上に公開されており、全員がL-Systemのバイブルともいうべき文献を手に入れることができた。
成果と課題
部活動優先で、放課後できても木曜日だけ、という時間的制約もあり、研究がどれだけ進んでいくのかまったく未知数であり、ほとんど活動できないことも予想された。しかし、生徒は予想以上に熱心に活動し、平面上でのタートルグラフィクスによるフラクタル図形の描画ができるようになった。自宅や校庭の木の枝分かれを写真に撮り、L-Systemの基本的概念も理解した。
次の図は、生徒の自宅の木と、タートルグラフィクスによる枝の成長システムを示す。枝の成長システムはCinderella上のプログラミング言語Cindyscriptを用いて描画している。自分たちでWeb上にあるレクチャや文献を読んで基本事項を理解した上に、フラクタルのドラゴンカーブを模した図形や、植物の成長システムをモデルとした図形を創造的に制作できたことが大きい。来年度は新入生を加えて活動を拡大していく意欲もあり、今後の発展が期待される。
参考文献
(1) G.Ochoa An Introduction to Lindenmayer Systems (1998)
(http://www.informatics.susx.ac.uk/research/groups/nlp/gazdar/teach/atc/1998/web/ochoa/)
(2) P.Prusinkiewicz・A.Lindenmayer 「The Algorithic Beauty of Plants」 SPRINGER VERLAG
天文研究会 目 的
天体観測や天文学の学習を通して、生徒の天体や宇宙に対する興味関心を高める。
本校の屋上の観測機器を使って天体観測や天文学の学習を行えば、生徒の天体や宇宙に対する興味関心を高めることができる。
研究内容と経過
活動内容は本校屋上の15cm屈折望遠鏡を中心に各種光学観測機器を用いて、昼間の太陽黒点観測や夕方を中心に惑星や星雲星団の観望を行っている。現在会員は2年生1名、1年生2名、計3名である。活動時間は、SSH研究会の趣旨である運動部の生徒にも参加しやすい時間帯に配慮して、昼休みと部活終了後の夜間に設定し、特別な理由がない限り放課後や土、日曜日は活動を行わない。
第1回目の観測として平成23年12月10日夜半から11日未明にかけて起こった皆既月食の観測を行った。
1 日時 平成23年12月10日(土) 午後8時から11日(日)午前2時まで
2 場所 磐田南高校屋上天体観測室
3 経過 20:00~21:45 観測準備
21:45 月食の始まり
23:05 皆既食の始まり
23:58 皆既食の終わり
1:18 月食の終わり
1:18~2:00 片づけ・ 解散
また、愛知県立一宮高校が主催するコアSSH「全国一斉!みんなで夜空の明るさ調査」にも参加している。これは、最近、マスコミでも問題になっている「光害」を高校生や小中学生が観測することによって、学校間で交流を図りながら、夜空の明るさを決める要因を追求するものである。