視覚障害教育の歴史
平安時代には宗教的な職業の一つとして、琵琶を奏でながら語り唄う盲僧琵琶がありました。また室町時代には、家々の門前を巡業で回りながら、三味線などを弾き唄う瞽女(ごぜ)という盲女性の芸能的職業も記録にあります。江戸時代には、この他に鍼(はり)やあん摩などの医学的な職業も行われていました。これらのことは、遠い昔から伝承的な方法で盲人に対する教育が行われていたことを示しています。また、江戸時代には寺子屋でも視覚障害者に対する教育が行われました。
明治になると学制が交付されましたが、障害者に対する教育は公には行われず、民間から盲者や聾者への教育の流れが起こりました。そして生まれた近代視覚障害教育の最初の学校が、明治11年(1878)に設立された「京都盲唖院」です。これは民間で活動していた古川太四郎らが京都府知事に訴えて実現したもので、当初から府立で、のちに京都府立盲学校となります。 【京都盲唖院】 盲教育史事典(鈴木力二編著)より
東京では英国人宣教師フォールズの働きで明治13年(1880)に楽善会訓盲院が設立されます。楽善会訓盲院は明治18(1885)年に文部省直轄の東京盲唖院となり、現在は筑波大学附属視覚特別支援学校となっています。
明治後期から大正にかけては全国で盲唖学校や盲児聾児のための特別学級が設立されましたが、多くは安定的に続けることができませんでした。大正12年(1923)に公布された「盲学校及び聾唖学校令」によって、ようやく日本の盲教育・聾教育は発展のための基礎固めができたのです。
静岡県では、明治31年(1898)に掛川市に東海訓盲院が設立されたのが最初です。東海訓盲院は大正6年(1917)に静岡市に移転し、昭和8年に静岡盲唖学校として静岡県に移管されました。翌年に盲唖が分離して静岡盲学校となり、昭和12(1937)年に現在の場所(静岡市駿河区曲金)に新築移転しました。
浜松では大正11年(1922)に鴨江町に私立浜松盲学校が創設されたのが最初です。昭和23年(1948)に県立移管し、昭和39年に現在の場所(浜松市中区葵西)に移転しました。
【私立浜松盲学校と 当時の校長 泉高次】 盲教育史事典(鈴木力二編著)より
東部地区では昭和24年(1949)に沼津盲学校が設立認可され、同年に第1回の入学式や落成式が行われ現在に至っています。
2018年時点で、静岡視覚特別支援学校が創立120年、浜松視覚特別支援学校が96年、沼津視覚特別支援学校が69年です。
視覚障害の等級
視覚障害の等級は、次のように1級から6級までに分かれています。
■1級
(1)視力の良い方の眼の視力が0.01以下のもの
■2級
(1)視力の良い方の眼の視力が0.02以上0.03以下のもの
(2)視力の良い方の眼の視力が0.04かつ他方の眼の視力が手動弁以下のもの
(3)周辺視野角度の総和が左右眼それぞれ80度以下かつ両眼中心視野角度が28度以下のもの
(4)両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が20点以下のもの
■3級
(1)視力の良い方の眼の視力が0.04以上0.07以下のもの
(2)視力の良い方の眼の視力が0.08かつ他方の眼の視力が手動弁以下のもの
(3)周辺視野角度の総和が左右眼それぞれ80度以下かつ両眼中心視野角度が56度以下のもの
(4)両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が40点以下のもの
■4級
(1)視力の良い方の眼の視力が0.08以上0.1以下のもの
(2)周辺視野角度の総和が左右眼それぞれ80度以下のもの
(3)両眼開放視認点数が70点以下のもの
■5級
(1)視力の良い方の眼の視力が0.2かつ他方の眼の視力が0.02以下のもの
(2)両眼による視野の2分の1以上が欠けているもの
(3)両眼中心視野角度が56度以下のもの
(4)両眼開放視認点数が70点を超えかつ100点以下のもの
(5)両眼中心視野視認点数が40点以下のもの
■6級
(1)視力の良いほうの眼の視力が0.3以上0.6以下かつ他方の眼の視力が0.02以下のもの
視覚障害の分類
視覚障害は、大きく「盲」と「弱視」に分けられます。
■『盲』
盲には、次のようにいくつかの段階があります。
「全く見えない(全盲)」
「光が感じられる(光覚)」
「目の前で手が動くのがわかる(手動弁)」
「目の前で立てられた指の数がわかる(指数弁)」
どの状態でも、図形や文字を見て理解することは難しく、聴覚や触覚などの視覚以外の感覚を使って情報を得る必要があります。
■『弱視』
弱視の方は、拡大したり、コントラストを高めたりすることで文字や図形を見て情報を得ることができます。
見え方は人それぞれにみな違い、読みやすい文字の大きさも違います。また、視野が狭くなる場合が多く(視野狭窄)、筒の穴から見ているように、非常に狭い範囲しか見えない場合もあります。
中には紙の白さがとてもまぶしく感じる人もあり、その場合には白黒反転したプリントなどが見やすく効果的です。